PC版ステラガイド Garakuta'sStellaGuide(GSG)  

概要
本ソフト(以下GSGと呼ぶ)はVixen GPエンコーダー対応の簡易天体導入支援ソフトです。
エンコーダーからのパルスをPCに取り込むのに簡単なハードウエアが必要です。まずはこちらの実験記事を参照下さい。

電子回路は超簡単ですが意外と入手しにくいのがGPエンコーダーの接続ケーブルでした。4極4ピンのモジュラージャック付きケーブルーですが電話受話器の接続ケーブルと同様のものです。しかし受話器のケーブルは短いカールコードになっているものは市販されていますが適度な長さのストレートケーブルは市販品が見つかりません。結局モジュラージャックとストレートの電話ケーブルと圧着ツールを単体で購入し自作しました。

ハードウエアの接続確認
FT245RLハードウエアを初めて接続するとドライバーをインストールするよう求められます。Windowsの指示に従ってドライバーをインストールしておきます。
GSGを起動したときFT245RLが繋がっていない、或いは認識されないとウインドウ下のステータス表示が赤くなり”FT245 not found”と表示されます。正常ならば何も表示されません。

GSGの使い方


GSGを起動したらまず以下の項目を設定します。

・自分の観測地情報を入力します。ただし後述の補助入力を使用しなければ入れなくてもかまいません。
・エンコーダーのカウント値を入力します。赤経/赤緯または方位/高度の各軸が一回転したときのエンコーダーのカウント値を入力します。通常、エンコーダーのPPRを4倍した値です。GPエンコーダーでは750PPRなので750*4=3000を入力します。
・使用する機材のマウント形式を経緯台/赤道儀ドイツ/赤道儀フォークの中から選択します。
・OKボタンを押して一旦設定画面を終了します。

・回転方向の設定
望遠鏡を大まかに南の水平方向に向けます。ドイツ式赤道儀の場合は鏡筒を極軸の東側、いわゆるテレスコープイーストの状態で行います。
各数値が00000となっている状態で縦長の*ボタンを押します。
ウインドウ下部のステータス欄が緑色になりEncoder Enableと表示されてエンコーダーパルスのカウント監視状態となります。
望遠鏡の赤経軸(赤道儀)または方位軸(経緯台)を時計回りに(南から西の方向に)動かした時、方位/時角の現在値が増加するように設定画面のエンコーダー反転のチェックを設定します。同様に望遠鏡を水平方向から天頂方向に動かした時、高度/赤緯の現在値が増加するように反転のチェックを設定します。この時、距離のカウント値は逆に減少する方向になります。
・設定が完了したら一度プログラムを終了させて設定値を保存しておきます。(終了時に全設定項目を自動保存します)

導入支援の基本
赤道儀の場合はまず極軸を合わせます。経緯台の場合は架台の水平垂直を合わせます。正確に設定するに超したことはありませんが赤道儀で写真を撮るのでなければそれほど神経質になる必要はありません。
次に適当な恒星を望遠鏡の視野中心に捉えその恒星の座表を現在値にセットし基準位置とします。*ボタンを押すとエンコーダ監視が始まり以後望遠鏡を動かすと常にその位置を現在値に表示します。この位置は天球上に固定された座標の時間に関係のない絶対位置です。この位置情報を見ながら目標天体の座標と同じになるように望遠鏡を動かすか、目標天体の座標を予め入力しておいてカウンター値が0になるまで動かして導入します。

基準星の現在値や目標の座標を入力する方法は以下の3つがあります。

1.直接入力する
赤道儀では時角と赤緯、経緯台では方位と高度を直接入力します。これらのデーターは他のプラネタリウムソフトなどで調べる必要があります。方位/高度、赤経/赤緯はどのソフトでも調べられますが時角を表示できるものは少ないかもしれません。フリーソフトのStellariumでは表示できました。
また数値は時や度の単位の実数で入力する必要があります。例えば12h34m56s=12.582という具合です。
ということであまり実用的でないかもしれません。

2.補助入力画面から入力する。
設定画面の”補助入力を起動する”にチェックを入れておくと補助入力画面が立ち上がります。これは1.の直接入力の実数変換や赤道儀の場合の時角取得の煩わしさを補うもので直接赤経/赤緯の座標を入力できます。


赤道儀の場合は上段、経緯台の場合は下段が入力対象になります。
上の例では赤経12h34m56s、赤緯-21度34.56分の天体座標を入力しています。
プラネタリウムソフトの座標表記は12h34m56sのような60進法や-21d34,56mのように分単位や秒単位が十進法に変わる実数表記など様々です。
入力形式は各単位2桁(方位の度単位み3桁)のhhmmss又はdddmmss形式が基本ですが使用するプラネタリウムソフトの表記に合わせて実数で入力することもできます。
上の例では12h34m56sは123456と入力しますが、-21deg34,56m(=-21度34分34秒)など少数を含むものは-2134,56と入力します。本来少数を表すのにピリオドを使用しますが数値であるべき場所がピリオドやカンマなど数値でないものがあるとそこから下は小数点以下の数値と解釈されます。したがってピリオドやカンマばかりでなくスペースでも良いですが半角の1文字でなければいけません。

座標を入力したら”現在値にセット”または”目標値にセット”ボタンを押すとそれぞれメインGSG画面の方に転送されます。この時、各数値は時や度を単位とする実数に変換され、さらに赤道儀では赤経座標が時角に変換され転送されます。なので赤道儀の場合は補助画面は赤経ですがGSG画面は時角であることに注意してください。

後は*ボタンを押してエンコーダーを有効にします。目標天体の座標も設定してあるとそこまでの距離に相当するカウンター値も表示されるのでこの数値が”0”になるまで望遠鏡を動かせば目標を捕らえられることになります。

この場合もスマホやタブレットのプラネタリウムソフトで天体の座標を調べてキーボード入力する必要があるのであまり使い勝手は良くないかも知れませんが、データーベースはプラネタリムソフトの豊富なデーターを利用できるメリットはあります。

3.Enc_star_posから入力する
設定画面で”Enc_star_posを起動する”にチェックを入れるとEnc_star_posという別プログラムが立ち上がります。これはこのサイトで紹介している自動導入システムのプログラムをモーターの代わりにエンコーダー対応に改変したもので、自動導入(GOTO)システムのエンコーダーバージョンというところです。


このプログラムを使用するにあたってはEnc_star_posの設定も必要になります。設定画面で使用する架台の形式をGSGの設定と同じにしておく必要があります。観測地情報も設定する必要がありますがその他の項目は無視されます。詳細はこちらを参照ください。

天体のリストから基準星となる天体をを選んで”基準(Align)”ボタンを押すとその座標がGSGの現在に転送されます。と同時に*ボタンを押さなくても自動でエンコーダーが有効になります。つぎに目標天体を選んで”目標(Go)”ボタンを押すとその座標がGSGの目標にセットされ、それらの距離に相当するカウンター値を計算します。ただし現在値を先に転送してから目標値を転送しなければならない制約がありますのでご注意ください。目標値を先に入ても良いですがその場合は*ボタンを押して距離の再計算をする必要があります。

以上、今のところ3.の入力方法が一番楽だと思います。

以下実際に使用して気の付いた事と想定される操作上の注意点を思いつくまま記しておきます。

・気になる導入の精度ですがGPエンコーダーの分解能は0.12度なのですが架台の設置精度、架台の直交精度、エンコーダーの取り付け精度などの影響を受けて望遠鏡の倍率は20倍から良くても50倍の視野2度から1度に導入できる程度だと思います。低倍率広角アイピースで視野に捕らえた後中央に持ってきて適当な倍率に変えるという使い方が良いと思います。

・赤道儀に於ける天の北極方向または経緯台に於ける天頂方向は導入誤差が大きくなります。なので基準星の選択はこの辺りの星は避けた方が良く、赤道儀では天の赤道付近、経緯台では地平高度が高くない恒星が良いかと思います。

・基準星の座標はボタンを押した瞬間の座標が使われますのでなるべく正確に望遠鏡の視野中心に導入して基準座標を確定します。できればこの時だけは高倍率が望ましいです。

・望遠鏡をすばやく動かすとエンコーダーパルスの取りこぼしが発生します。取りこぼしが発生するとエラーカウントが加算されますが1カウントが1パルスとは限りません。あくまでも取りこぼしを検出した回数なので4〜5以上になったら基準設定からやり直した方が良いです。特に回転方向が変わる時は注意が必要です。どのくらいのスピードで動かせば安全かは前もって体験しておく必要があります。

・本ソフトのエンコーダー監視中(緑のステータス状態)はCPUタイムをかなり消費します。CPU能力が高い必要は無いですが裏で他のプロセスが走っているとエンコーダーパルスの取りこぼしが多くなるかもしれません。(本来ハードでやることをソフトで実行しているため。その分ハードが簡単になっています。)また他のUSB機器は外しておいた方がパーフォーマンスが上がります。

・現在座標は目標座標に近づくと本来同じ値になるはずですが必ずしも一致しません。これは2点間の距離が分解能で割り切れるとはかぎらないからです。むしろ割り切れる方が少ないので距離カウンターは+−1の誤差があります。

・導入する時は最初からカウンター値を監視するのではなく大体の方向と思われる方向まで動かしてクランプを締めてから微動ノブを操作してカウンター0までもっていった方が楽です。

・本ソフトはある程度メジャーな星座の1等星の名前くらいは知っていることを暗黙の前提としています。なのでまったくの初心者では利用は難しいかと思います。

・目標天体の座標を入力してから実際に導入されるまでの時間が長いとその間に目標天体は日周運動で移動しているのでカウンター値が0でも視野から外れている可能性があります。この時はもう一度目標座標を転送してカウンター値を更新した方が良いです。倍率にもよりますが1分以内に導入できれば問題ないと思います。

・ドイツ型赤道儀に於いて望遠鏡が極軸の東側か西側にあるかは重要な問題となります。本ソフトGSGでは子午線(真南、天頂、真北を通る天球上の大円)を挟んで時角0時(真南)から12時(真北)の西側半天球方向は望遠鏡は極軸の東側すなわちテレスコープイーストの状態であると自動で判断します。したがって真南(=時角0時)を境にして西側の天体ではテレスコープイースト、東側の天体ではテレスコープウエストで基準星を導入してください。

・さらにドイツ型赤道儀ではたとえ目標が現在位置から数度しか離れていなくても子午線をまたぐ導入は鏡筒の反転を促す動作となります。

・エンコーダーは必ずしもGPエンコーダーでなくてもかまいませんが各軸1回転のカウント値は4000カウント(=1000ppr)までが実用的と考えます。望遠鏡をゆっくり動かすという条件ならばもう少し多くても良いと思いますがこのハードウエアとGSGではこの辺が限界と思われます。もっと高機能を期待する方はDigital Setting Circlesで検索するとプラネタリウムソフトに連動した高機能なアイテムが見つかりますのでそちらをお勧めします。

・導入テストの時どうも導入精度が悪いと思っていたらGP赤道儀のエンコーダーの取り付けが悪く、エンコーダーハウジングを回転方向に回すと10カウント程ガタがあることが分かりました。10カウントは1.2度に相当するのでアイピースの視野から外れます。ガタを完全に無くすことは不可能ですがテープ等で固定して1カウント以内に収める必要があります。

・目標天体はなるべく近くの基準星から導入した方がより確実なのは言うまでもありません。星雲や星団を基準位置にすると誤差の原因になります。なるべく近くの恒星を基準にしてください。


動作テストは以下の機材でテストしました。
Vixen GP赤道儀+GPエンコーダー
Pentax75SDHF(500mm)+LV25orLVW17
PC:Panasonic CF-W2(Pentium M(1.1GHz)、メモリー:768MB+GreenHouse GH-UH204SBS USB2.0 4PORT HUB
OS:Windows XP Pro SP3

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2013/03記

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