顕微鏡接眼レンズの性能は如何に?

顕微鏡接眼レンズ(以降アイピースと表記)の対望遠鏡性能はどうかとプチ評価をしてみました。
手元にあるのはオリンパスのGWH10x 23と刻印があります。23は焦点距離23mmということでしょうか、実体顕微鏡に装着して10倍の倍率が得られるようです。

顕微鏡用アイピースを天体観望に使うための最大のネックはそのバレル径が違うことです。顕微鏡のアイピースバレル径は30mmなので、まずここを合わせなければいけません。天体望遠鏡のスリーブ径=31.7mm-30mm=1.7mm太くする必要があります。内径30mm肉厚0.8mm程度のパイプがあればよいのですが、そう都合の良いものはみつかりません。唯一使えそうなもので内径30mm外径32mmというアルミパイプがあるのですが外径を少し削って31.7mmにすることも考えたのですが、工作機械を持たない素人では均等な太さにするのは難しいだろうということでこれは断念しました。残る手段として薄手の金属板をバレルに巻いて外径を合わせるということにしました。最初0.5o真鍮板で試みましたが、たとえ0.5oでも真鍮板では硬くて真円に巻けません。そこで0.5mmアルミ板に変えて小さ目のリングを作って何とか妥協できる形にできました。最終的にはその上に更に0.1mm真鍮板を巻いて外径を微調整しています。計算上は(0.5+0.1)*2+30=31.2mmなのですが工作精度誤差や両面テープの厚さなどが加わり31.7mmスリーブにちょうど良いフィット感になりました。この作り方の欠点としてはつなぎ目が残ることですがそこは目をつぶることにします。余談ですがバレル表面がアルミのままだとスリーブのネジが食い込み操作感を損ないます。

比較のため手持ちで焦点距離の近いビクセン LV20、バーダープラネタリウムHyperion 24mmと比較してみました。

望遠鏡に装着してまず感じることは焦点位置が大きく違うということです。 LV20とHyperion 24mmは大体同じなのですがGWH10xは約15mmほどフォーカスを後退させなければなりません。それもそのはずで視野環がバレルの先端に位置しているのです。望遠鏡用のアイピースは大抵バレルの後端ですがこの辺が望遠鏡の常識と違うようです。 視野は他のアイピースから推定して60度と思われます。眼鏡をかけていても全視野を見渡せるのでアイレリーフも20mm程度はあると思います。


肝心の見え味ですが他のアイピースと比べるとスッキリして落ち着いた視野であるといえます。星像が他のアイピースと比べて一回り小さく感じられ、特に中心付近の星像は一番良いと思われます。
順位を付けるとすると GWH10x>Hyperion 24> LV20 こんな感じです。
周辺像の評価は正直いって分かりません。評価できる自分の目が疑わしいからです。両目ともかなりの乱視なので眼鏡をかけていても矯正できる範囲は限られています。そのためアイピースの中心を凝視しているときの周辺像と周辺を意識的に凝視するときの星像は大きく異なります。

格子パターンをコリメート撮影したので参考にしてください。


OLYMPUS GWH10x  60度

VIXEN LV20  50度

BIRDER Hyperion 24  68度

赤枠は同じ大きさの範囲で周辺の歪曲収差の目安として入れました。ここでもGWH10xが一番良いようです。Hyperion 24mmは視野68度でこの中では一番広いのですがコリメート撮影では全視野が写りません。この辺は実際の眼視と違うかもしれません。

そもそも対物レンズの設計コンセプトが異なる顕微鏡と望遠鏡は当然アイピースの設計コンセプトも違い顕微鏡アイピースは使えないだろうと思っていましたが大きな誤解でした。とにかくこの3本のアイピースの中では一線を隔すと言ったら言い過ぎでしょうか? このくらいの焦点距離のアイピースは望遠鏡では星野や星雲、星団観測に使われることが多く細部に拘った観測よりも視野の広さと平坦さが求められるのだろうと思います。顕微鏡では視野の平坦さもさることながら中心部の解像度が求められるのだろうと思います。
一流メーカーの顕微鏡アイピースは新品だとン万もするのでわざわざ購入することはありませんが、オークションなどで格安の中古アイピースを入手できれば儲けものといえます。但し中古ではレンズのコーティングにダメージがあるものが多いようです。

2015/07/25 記

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