MT-1モーターをUSB-IOで動かす
Vixen MT-1モーターは軽量コンパクトでそこそこのトルクと精度を持っているのでいまだに根強い良い人気があるようです。
MT-1のドライブコントローラはSD-1,MD-6,DD-1,DD-2,スカイセンサー3・・・など多彩なコントローラーが存在するようですがこれらのコントローラーの代わりをパソコンのプログラムで代用できないだろうかというのが今回の実験です。
具体的にはPCからUSB-IOでモーターを駆動して恒星時追尾精度や最高速度の検証を行いあわよくばオートガイドや自動導入ができないだろうかということです。
まずモーターの素性を調べます。 日本パルスモーターのPF42-48I3Gですね。20ohms/phase、315mA/phase、g.ratio1/120ということなので約6Vで駆動すればちょうど良さそうです。ということは以前の自動導入システムの回路がそのまま使えることになります。 |
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コネクターからモーターまでのケーブルのみを作れば良いので簡単に実験ができます。 8pin Dinケーブル→ |
メーカーの製品情報によればPF42-48タイプのステップ角は2相励磁で7.5度ということなので1回転48(=360/7.5)ステップです。PF42-48の-48がステップ数を表すようです。
モーター減速比は1/120なので144歯のウオームを持つ赤道儀につけると総減速比1/17280となり1ステップ1.56888秒角(=7.5X3600/17280)となります。一方恒星は1秒あたり15秒角動くので1秒間に9.5609(=15/1.56888)ステップすなわち約104ms(=1/9.5609X1000)ごとにステップを進めれば良いことになります。
簡単なテストプログラムを作って実験しました。
以上の実験はコントローラーチップがNECのUSB2.0アダプターを使用してプログラムで2相励磁のパルスを作ってテストしました。 PC本体のUSB2.0ポート(Intel Chip)ではUSB1.1として動作し伝達ギヤー一回転23秒で26倍速が限度のようです。 推測ですがUSB-IOは本来USB1.1規格なのでLowSpeedの転送しかできないはずだがHostが相手の規格を無視してHighSpeedで動作すればそれに追従するのかも知れない。 USB-IOにとっては規格外動作なのだが自動導入システムの実績から問題はなさそうだ。 |
実際に恒星を使って追尾の状況を調べてみました。
普段はスカイセンサー2000のMT-2モーターが着いているベランダのGP赤道儀に赤経モーターのみをMT-1に交換して実験しました。
上の計算通り104msごとにパルスを送って駆動すると恒星は徐々に西へ移動していきました。追尾速度が遅いようです。パルスを送る周期を少しずつ早くして最適値を探すと。
GAGP1を使ってガイド停止で追尾状況を調べる。(420mmガイド鏡)
100と101の間に最適値があるようです。すなわち100では早すぎ101では遅すぎるということです。
この結果はある程度予想はしていたがこれほど計算値とかけ離れるとは思いませんでした。モーター駆動プログラムはWindowsTimmerというものを使っているのだが最低分解能が1msであるのと、そもそもWindowsTimmer自体が水晶発振器ほど正確ではないのに加えてプログラム上誤差が累積されるからと考えられます。
ちなみに手持ちのVIXEN純正MD-6だと
極軸が合ってないせいか赤緯にずれがあるが赤経はほぼ満足に追尾している。
100と101の間に最適値があることが分かったのでプログラムを変更して補正値を設けた。
結果
補正値を何度か変更し最適値を求めると純正MD-6並みの追尾精度が得られた。
補正値は上の例では100msごとにパルスを送るが26パルスに1回パルスを遅らせるという状況を作った。
補正2でもう少し厳密に補正することができるが必要ないかもしれない。
これでオートガイドを行う目処はついた。本来オートガイドを行うにはモーター駆動コントローラー(MD-6など)とガイドリレーBOX(GAGP1など)が必要だがこの例ではモーター駆動回路を直接制御できるのでリレーBOXが不必要になる。
最近はオートガイドなどにパソコンを使わない傾向だが逆にパソコンとこのモーター駆動回路さえあればあとはソフト次第で自動導入からオートガイドまでこなせるのだが最高速32倍速では自動導入はちょっと厳しい。でもスカイセンサー3S,3Dの代わりくらいはできるかもしれない。