双眼鏡手動導入経緯台

夏の天の川や明るい散開星団、散光星雲、暗黒星雲(帯)など双眼鏡で流していると望遠鏡とはまた違った楽しさがたくさんあります。
私も初心者のころ梅雨の晴れ間に双眼鏡で偶然見つけた散開星団の美しさは今でも脳裏に焼き付いています。双眼鏡の視野の中で多くの星がキラキラ輝いてなんともいえない美しさでした。それは雨上がりであったためと低空のため今でいうシンチレーション(大気の揺らぎ)の影響ですが天体写真にとって嫌われもののシンチレーションも双眼鏡にとっては美しさの見方になってくれるのです。(後日この散開星団はさそり座のしっぽにあるM7であったことを覚えています)

しかし正直いって初心者に星座盤や方位磁石を使って双眼鏡で星や星団を見つけてごらんなどというのは酷であるといえます。高度10度が腕を伸ばしてげんこつ一個分だとか、高度90度が天頂だと分っていても実際にその方向に向けられる人は少ないのです。こんなアバウトな方法では肉眼で確認できる対象は良しとしてもそうでないものは双眼鏡といえども無理な話なのです。
ということで双眼鏡(あわよくば小型望遠鏡も)の手動導入経緯台(パソコン必要)を作ってみました。経緯台というと大げさですが補助目盛り付き架台です。


パソコンのプラネタリウムソフトで対象の方位、高度を調べそれを手動導入しようとするものです。方位磁石も必要なく5Cm12倍の双眼鏡視野に導入できます。
安価な自動導入経緯台も販売されていると言うのに今さらという感もありますが まっ、夏休みの工作と言うことで・・・

ホームセンターへ
例によって材料集めにホームセンターへ・・・最初はすべてベニア板からパーツを切り出してと考えていたのですが少しでも手抜きをするためいいものを見つけました。木の棚受けというもので合板を90度曲げてあり強度も双眼鏡を支えるには十分で、これをフォークアームにしようというわけです。他に9mm厚のベニア端材と6x40mm、6x25mmネジ/ナット、6mmオニメナットを購入しました。メイン材料はこれだけであとは手持ちのガラクタ部材少々です。

組み立て
双眼鏡受け台と水平回転台を9mmベニア板から切り出し写真のように組み立てます。写真は塗装してありますが全て仮組しバランス調整などが終わってからの方が良いでしょう。双眼鏡受け台やフォークアームの幅は乗せる双眼鏡に現物あわせして決めます。双眼鏡はビノホルダーで受け台に固定しますが垂直回転軸に対してフリーストップとなるようにバランス調整します。最初の写真では通しファインダーのように見えるビノホルダーですが正規位置では高すぎるのでバランス調整の結果低い位置に双眼鏡を取り付けられるようにしています。
ここで大事なことはフォークアームの垂直回転軸が水平回転台(面)に対して平行になっていることです。具体的には左右の垂直回転軸(耳軸という)の高さが水平回転台(面)から同じ高さであればOKです。


三脚ベースは手持ち10mm厚のベニア板から切抜きました。オニメナットは三脚ネジ(W1/4ネジ)をねじ込むところですがW1/4規格のオニメナットが無かったので6mmのものに無理やりW1/4のタップを切っています。ここはW1/4通常ナットを使用しても良いのですが板上に出っ張らないように工夫が必要です。6x40mmのネジも下から通し頭が出っ張らないようにベニアの層を彫刻刀などで削って埋め込んでおきます。またこのネジは空回りしないように接着剤で固めておきます。

三脚ベースの上に水平回転台が載るわけですがここはスムースに回転しなければなりません。不要になったCDを水平回転台の裏にボンドで貼り付けCDと三脚ベースの接触面に押入れシート?を貼り付けました。表面がすべすべしていてこすり合わせるとなかなか良い感じでしたのでこれを使いましたが、テフロンとかフッ素加工したシートなど摩擦係数の少ない感触の良いものを選んでください。ニチアス(株)のカグスベールというシート(A41枚\1800)が良いかもしれません。

三脚ベースの上に水平回転台を載せナットで留めますがナットの下に樹脂ワッシャーを2枚いれておきます。このワッシャーはビデオカセットの外ケース(すべり具合が良い)を円形に切って作りました。水平回転台を回して感触の良い強さにナットを締めますがナットが回転につられて緩まないようにゴムボンドを少量つけてねじ込みます。この感触は言葉で言い表せませんがきつくなくゆるくなくというところでしょうか、あまり軽く回るのは良くありません。

さて、肝心の目盛環ですがWEBになにか良いものが落ちていないか探したのですが見当たりませんでした。本当はCADソフトなどで作ると綺麗にできるのでしょうが使い方を習得するのに時間がかかりそうだったのでフォトショップでシコシコ作りました。最小目盛はあまり細かくしても作図精度が追いつきませんので2度単位としました。これをプリントしてCD-ROMに貼り付け方位目盛環としています。高度目盛も同じ画像を使い前記ビデオカセットの外ケースを切り抜いて作ったものに貼り付けています。あまり正確ではありませんが目盛環画像はこちらからダウンロードできます。AdobeReaderでCDの大きさにプリントできます。

方位目盛環は水平回転軸(6X40mmネジ)にナットでサンドイッチにします。ここも前記樹脂ワッシャーを入れて独立して回転できるようにします。また耳軸の方も同様に樹脂ワッシャーを入れて双眼鏡受け台の回転がスムースになるように締め付け圧を調整しますが高度目盛も独立して回転するようにしておきます。(すなわち高度目盛は通常双眼鏡受け台と一緒に動くが目盛だけを独立して動かせるようにする。又は指標を動かせるようにしても良い)回転によってナットが緩むところはボンドをつけておきます。後で記しますが目盛環が独立して動くということがこの作例のミソです。
目盛環の指標はどこにつけても良いのですが見やすい位置に写真のようにアクリル板にケガキを入れて水準器とともに貼り付けています。

調整
調整という程のことではないのですが出来具合を確認しておきます。
使用する双眼鏡を取り付けて水平なテーブルなどの上におき、水平回転盤を一回転させたとき水準器の気泡が基準サークルから外れなければOKです。
耳軸の高さが左右同じであることを確認します。
各部にガタがないこと。
双眼鏡の光軸が垂直回転軸(左右の耳軸を結んだ線)と直角になっていることが必要です。ここが一番悩むところですが、建物の垂直な稜線などを使って垂直回転軸周りに回転させたとき稜線がいつも視野の中央に見えるように双眼鏡の方向を固定します。実際は10倍程度の双眼鏡ではプリズムカバー枠などで垂直回転軸との平行を目安で合わせればOKです。一度合わせたら取り付け再現性のために印を付けておきます。この辺の理屈はyamacaさんのページ→アイデアと自作記(経緯台で星を導入する)が参考になります。


導入の方法
* しっかりした三脚にセットして水平回転台が水平になるように三脚を調整します。
* パソコン(小型ノートパソコンがベター)でステラナビゲーターStella Theater Pro/Liteなどの星図ソフトを立ち上げておきます。
* 明るい星(初心者でもメジャーな星くらいは覚えてネ)を視野中央に入れます。(あまり高度が高くない方が良い)
* この星の現在の方位と高度を星図ソフトで調べ方位、高度それぞれの目盛環を回してなるべく正確に合わせます。
とはいっても目盛が2度単位ですから1度単位は目盛と目盛の間を目安で合わせることになります。これでも方位磁石で合わせるよりはるかに正確です。(180度の位置が真の北になります)この作業はなるべく早く行うことが必要であることはいうまでもありません(1分以内で充分)。これで目盛環の初期設定が完了しましたのでこれ以降目盛環は動かさないようにします。目盛環が独立に動かせることによって架台のセッティングも楽ですし双眼鏡のティルト方向(鉛直方向)の取り付け誤差も気にしなくて良いのです。
あとは導入したい対象を星図ソフトで選んで方位、高度を合わせれば視野に入っていることになります。私の5Cm12倍双眼鏡(視野5.5度)では殆どの場合視野のどこかに対象を見つけることができます。高度が高くなるとビノホルダーのたわみによって多少ずれることがありますが上下方向に少し振って探せば大抵見つかります。初期設定を対象近くの星で行うとほぼ視野中央に導入することができます。この方法だと20倍程度の望遠鏡でも導入可能と思います。

最後に
すでにお気づきでしょうが、作例では天頂付近が覗けないですが重量バランスを考えてのことで、アームを傾けた構造にすれば天頂も覗きやすくなるのですが重量バランスの工夫が必要となり、あえてこのようにしています。45度傾斜接眼のフィールドスコープなどにもお勧めです。

夏休みの工作にいかがですか・・・
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