電動フォーカサー

高倍率の惑星観測/撮影ではフォーカスノブにさわると僅かな振動でも大きくぶれてピント合わせに苦労します。なるべく鏡筒にさわらないでピントを合わせたいということで電動フォーカサーというものが市販されています。フォーカスノブをモーターで回すだけなので自作も簡単です。せっかくモーターで回すのですからピントも自動で合わせられるようにしたいと考えて20CmシュミカセのC8で↓のようなものを製作しました。

1.5mmアルミ板でベースを作って鏡筒周囲のねじ穴3箇所で固定しています。電動フォーカサーとしてはコンパクトさが失われていますがねじ穴が離れているので仕方ないことです。後になってフォーカスノブの丸いブベース部分に固定すればもう少しコンパクトにできたのではないかと思っています。
モーターはスキャナーについていたジャンク品で「USB-IOでスッテッピングモーター駆動実験」で使用したもので200PPR、1.8deg/stepです。小型でトルクが心配でしたがシュミカセのフォーカスノブは軽いので2:1位に減速すれば十分なトルクを得られます。
フォーカスノブには塩ビジョイントに塩ビパイプを差し込んで輪切りにしたものをはめ込んでベルトでモーターと接続しています。モーターのプリーは直径16mm、塩ビプーリーは33mmですので2.06:1の減速比を得ています。ベルトは布ベースの平ベルトですが伸びとかスリップが不安と思われるかも知れませんが適当な張力(テンション)を与えておけば問題ありません。

単に電動フォーカサーというだけならここまでで良いわけですが、このモーターを回すのにパソコンでスッテップパルスを作っているのでモーター回転数を制御してピントだしもできるはずです。正確に言うとパソコンがピントだしを行うということではなく自分がピントだしを行った位置をパソコンに記憶しておくということです。アダプターなどが変わるたびフォーカス位置を探していたのをパソコンで再現できれば便利かなと思ったのです。
シュミカセのフォーカス機構は外から見て焦点がどの辺にあるのか全く分かりません。モーターがピント位置を再現するのに基準ポイントが必要になります。そこでまず最初に考えられるポイントはノブを回しきってこれ以上ノブが回らなくなった所が考えられます。そこから何回転と何分の1戻った所がピント位置とする事ができます。しかしノブを回しきったところは内部ねじの喰いつきがあって基準ポイントに使えません。そこで基準ポイントを外部に設けるべくこんな↓機構を追加しました。

写真左で、塩ビプーリーに立てたポスト(ねじ)がノブを一回まわす毎に白いプラスチックギヤーを1歯進めます。白プラギヤーの裏側に立てたポスト(ねじ)が回転して行くとアルミアングルにリミットされこれ以上ノブは回らなくなり、これを基準ポイントにしています。モーター駆動している時に強制ストップしますのでベルトがスリップするかモーターの脱調が起こりますが実験の結果は問題ないようです。本当はリミット位置をセンサーなどで検知してモーターを停止するのが常套手段なのですがフィードバック回路を入れるのが面倒くさかったので手抜きしました。
モーターが停止している時は手動でもノブを回すことができます。ギヤーは24歯ありますのでノブは24回転以内でピント位置を探すことになります。(このC8では本来38回転分の移動量があります) その後写真右のように位置再現性を確認するためギヤーとプーリーに目盛りをいれました。穴あけミスとか工作の稚拙さが目立ちますが素人の工作として笑納ください。

ここで使用しているギヤーとかベルト、スプリングといった部品は職場に廃材としてゴロゴロ転がっているのですが、一般には意外と入手しにくいものですがラジコンや鉄道模型店で探して見るのも手かと思います。

制御ソフト
基本的にはWEB CAMで惑星を撮影する時、映像を見ながら焦点位置を探すことを目的にしていますが、眼視や直焦点撮影の時はアダプターとかの組み合わせが異なり当然焦点位置が異なるわけです。そこでそれぞれの焦点位置をパソコンに記憶して毎回焦点位置を探さなくても良いように位置を再現できるようにしたものです。
思いつくまま機能を追加した結果統一性のないものになってしまいました。

考え方としては基準ポイント(HomePosition)から何回転すれば焦点位置かということです。ここで天体望遠鏡は大抵の場合上を向いている分けですからC8シュミカセのミラーには重力で下方の力が働いています。従ってミラー移動式のC8は下から上即ち筒先に向かって移動してやるほうがバックラッシュを吸収して都合が良いわけです。そこで基準ポイントはノブを時計方向に回した適当な(適切な)場所(接眼部側)にとります。ここから何回転かノブを反時計方向に回せば焦点位置であるということができます。

この何回転回せば良いかを決めるのにいくつかの方法があるのですが一例をあげておきます。
はじめに使用する機器で手動でピントを出しておきます。左側のラジオボタンを選び(図例では最上欄)移動量の欄に適当な数値を入れます。(基準ポイントの位置の選び方によって大きく異なりますが作例では1000位) 「<Home」ボタンの左の数値を"0"にして「<Home」ボタンを押すとモーターが回転し、Count欄に移動量をカウントしながら表示し、ボタンは「Stop」に変わりいつでも停止できる状態になります。ギヤーが回転して基準ポイントでリミットされる寸前で「Stop」ボタンを押します。(^-^;

カウントとモーターが停止しますので微調整の「<」ボタンをクリックして1カウントづつ動かしてリミットさせます。これで焦点位置から基準ポイントまでの移動量が分ります。「SET」ボタンを押すとカウント値が移動量にセットされますので、ここで「Focus」ボタンを押すと先ほど手動で合わせた焦点位置まで戻ることになります。しかしバックラッシュのため(*)大抵は少し足りないので「>」ボタンをクリックして再調整します。「>」ボタンをクリックした回数だけ移動量の数値を増やして再度「<Home」「Focus>」を繰り返して焦点位置があっていることを確認します。
「<Home」ボタンの左の数値は確実に基準位置にリミットさせるため「<Home」ボタンを押した時のみ加算する移動量です。
このようにして色いろなアダプター、カメラといった機材などの焦点位置を記憶させておけば次回からは基準位置から「Focus>」ボタンを押すだけで焦点が合うことになります。またここでいう1カウントとはステッピングモータパルス4ステップ分のことでフォーカスノブの回転角としては約3.2度に相当します。

「確認」その他ボタンについて
通常焦点を合わせる作業は焦点付近を行ったり来たりして焦点のピークを探すわけですがこの作業をモーターにやってもらおうとするものです。
このボタンを押すと移動量最下欄の数値(図例では20)を使って焦点を中心にフォーカスノブを反時計回り→時計周り→反時計回り→休み・・・を繰り返すように動きます。「-<」「>+」ボタンで中心の位置を移動させて焦点位置を探るわけです。惑星の撮影などでは合成F値が大きくピークが分りずらいのですが手動で合わせるよりずっと楽になります。必ず反時計方向に回った後stopするようにしています。またWEB CAMの映像を見ながらということでキャプチャー画面の邪魔にならないように小さめのウインドウにしています。
「設定」ボタンはバックラッシュの測定/設定やモーターの反転などを設定する別画面が開くのですが今回は使わないので省略します。(*)ソフト的にはバックラッシュを設定しておけば回転方向が変わる時に補正が入ります。入力した数値やコメントは「終了」ボタンを押すことで保存されます。

最後に
ソフトで画像解析ができればもっと自動で焦点合わせができるのですが私にはその能力はとても持ち合わせていないのでどなたかが開発してくれることを期待しています。勿論FREEで!
   

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