太陽を使った極軸合わせ

WEBでは昼間の太陽を使って極軸を合わせたい要望が結構あるようですが意外と知られていない私が2009年上海皆既日食で使った方法を紹介します。
極軸望遠鏡で北極星を使って合わせる方法より精度は低いですが方位磁石と水準器を使う方法よりはずっと精度は高いです。

極軸は方位と高度の二つの軸を正確に合わせれば良いわけですが水準器はともかく方位磁石は精度が不足します。理由は方位磁石の北が真の北ではない、場所によって偏角が異なる、目測による磁針と極軸の平行調整では誤差が大きい、周りに金属があると変化する、などがあげられとても精度がありません。
一方水準器では普及タイプでも0.5度程度の傾きは確認でき、悪く見積もっても1度の精度は十分あります。

そこで太陽と水準器だけで合わせる方法です。

1.極軸を大まかに北に向けて設置する。
2.架台に水準器を載せて全方向で水平にする。(赤道儀付属の丸型水準器では精度が不足するかも。)
3.前もって観測地の緯度に合わせた水準器を極軸の背中に乗せて極軸の高度を調整する。(下写真左)
4.観測日の太陽の赤緯座標を調べて赤道儀の赤緯軸をそれに合わせ固定する。以後赤緯軸は動かさない。(2012/5/21=20°13’一日中太陽の赤緯は変わらない。下写真右)
5.赤経軸を回して太陽を太陽ファインダー等に導入する。この時正確には合わないはず。
6.極軸の方位調整ネジで太陽ファインダー等に導入する。
7.5,6を繰り返す。


と、まあ文章にすると面倒な感じですが実際にやってみるとそれほど難しくはありません。
ただし、各部の精度が保たれていることが前提です。例えば極軸の背中が本当に極軸に平行か、赤緯目盛りが正しいか、導入ファインダーが正確に調整されているか、など前もって調べておかないと意味がありません。
特に極軸の背中は実際に極軸望遠鏡で正確に合わせたときの状態で水準器または背中の補正をしておかなければなりません。

以上の手法は極軸が正確に合っている赤道儀で天体を導入すれば赤緯目盛はその時の天体の赤緯座標を示すはずという原理に基づきこれを逆手に取ったものです。

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