日中ピリオディックモーションを測定する方法

先日測定したスカイメモNSのピリオディックモーションですがグリス等の経年劣化のためか期待はずれの結果だったので各所の点検と調整をしようと決意したのですが、結果の良否判定は専用測定器を持たない個人では当然今まで通りの方法でピリオディックモーションを測定して確認するするという方法しかありません。
しかしこういう作業は調整しては確認という反復作業となるため夜間恒星を使っての測定では効率が悪くて作業が捗りません。
そこで日中に測定する方法はないものかと考えた結果次の方法を思いつきました。(すでに既知かもしれないが)

その1、遠くの景色を一定間隔で撮影する。
赤道儀を恒星時駆動しながら遠くの景色を一定間隔で撮影すれば写った景色の特定の場所は一定間隔にずれて撮影されるが当然ピリオディックモーションの影響を受けて理論値から僅かにずれるはずである。このずれを計測すればピリオディックモーションを測定できると考えました。

測定精度の面からはなるべく長焦点のレンズが良いのですが、10分周期のピリオディックモーションを持つ赤道儀では10分間の移動で撮影画像中の特定の場所が画面からはみ出さない焦点距離の撮影レンズを選ぶ必要があります。なおかつ画面の中央と周辺部で大きさが変化しないディストーションの少ないレンズが必要となります。
また撮影間隔はなるべく正確に、できれば誤差1/10秒以内で撮影することが望ましいと考えます。

具体的には撮影レンズPENTAX 75SDHF +RC0.72(焦点距離360mm)にCanon EOS KissX3を使用しました。APS-Cサイズのカメラにはちょうど良い画角です。
撮影方向は移動量の大きな極軸と直角方向(赤緯0度付近)で地上の景色ということもあり必然的に東か西(赤道儀から見て)になります。画像の横の辺が赤経方向と平行になるようにカメラを調節して撮影します。撮影はインターバルタイマーを使用し30秒間隔で21枚撮影しました。


これら画像の特定の場所、この例では鉄塔の先端座標(+印)を画像の1枚目から21枚目まで測定します。たいていの画像処理ソフトではマウスポインターの位置を表示できるので各画像の同一ポイントのX座標をなるべく1ピクセルの精度で計測します。撮影枚数は多いに越したことありませんがあまり多いと計測が大変です。
画像の最初と最後の座標から移動した距離をピクセル単位で求めるとこれを20等分した値が各画像の移動距離の理論値(平均)になります。
一方最初と最後の撮影時刻の差を秒の単位で求め15倍(1秒=15秒角)すると移動した角距離が求められます。これを移動した距離で除算すれば1Pixelあたりの角距離を求めることができます。
これらの値をEXCELに取り込んで表にしてみました。


理論値は1枚目の実測値を基準に移動距離の平均値を加算していますので最初と最後の画像で実測値と理論値の差は0となります。10分間の中にウオームシャフトは1回転して元の位置に戻るのでピリオディックモーションの最大振幅が存在するはずという考えに基づいています。
この例はベランダに据え付けてあるGP赤道儀のものですが10分20秒の間に3526ピクセル移動しているので1ピクセルあたり2.6秒角ということになります。実測値と理論値の差(=ピリオディックモーション)の最大振幅は11.3ピクセルで11.3X2.6=29.4秒角のピリオディックモーションであることが分かります。これは恒星で実測した値にほぼ近い値なので信頼性はあると思います。

その2、定規を一定間隔で撮影する。
その1では遠くの景色ということで屋外での作業になるがやはり室内でなんとかならないものかと考えたくなる。狭い室内では望遠鏡の焦点が出ない可能性もあり写真レンズを使うしかないが近距離のためディストーションの影響を受けやすいので上の方法は使いたくない。
考え方の基本はその1と同じだがこちらは写った景色の特定の場所ではなくて画像の特定の座標を基準にする。定規を壁に貼り付けてこれを撮影すると画像の特定の座標は定規の上を進むので各画像ごとに定規の目盛りを読む。精度を上げるためにはなるべく長焦点のレンズを用い拡大率を上げたい。また定規とカメラの距離は離れていたほうが良いが狭い室内では限りがある。


具体的には2.6m離れた所に定規を約55度傾けて壁に張り付け赤道儀の赤経方向と合わせる。手持ちレンズで一番長焦点のシグマ70-210ズームを210mm位置で使用しスカイメモNSに乗せて上と同様インターバルタイマーを使用し30秒間隔で21枚撮影しました。
1枚目の画像で定規の特定の場所(この例では30Cmの目盛りの所)のY座標を読みます。この値を1456とすると以後各画像のY=1456の所の定規の目盛りを記録します。画像を300%拡大して目測で1mm以下まで計測します。目測でも0.2mm程度の誤差で測定できます。
これをEXCELに取り込で表にします。計算式を入れておけば使い回しができます。下表はその1の表を使ったので実測値(X座標)となっていますがここではY=1456の所の定規の目盛です。


620秒の間に127.8mm移動しているので1mmは72.77秒角ということになります。したがってピリオディックモーションの最大振幅は1.03mmなので1.03X72.77=74.9秒角=±37.5秒角ということになります。目測誤差±14.5秒角を加味すると上と同様恒星で実測した値に近い値なのでそれなり傾向は把握できます。



その3、パソコンで擬似恒星を作る
上の方法は昼間できるとはいえ画像を測定する作業が面倒だ。もっとリアルタイムでできないかと考えていたおり恒星と同じ角速度で動く物体があれば良いことに気がついた。ならばパソコンで擬似恒星を作ってパソコンの時計を使って動かせばどうかと閃いた。早速簡単なプログラムを作ってみた。


これは赤経方向を調整する初期画面だが立ち上がり角度、恒星の大きさ、恒星の移動速度、東西方向などを
設定できる様にしている。
スタートすると赤経方向ラインが消えて擬似恒星が左下から右上に向かって一定速度で移動する。
これをGAGP1を使って恒星と同じように測定する。


このプログラムを作っていて気がついたが赤道儀コントローラーに2倍速のボタンがあれば恒星の移動速度を2倍にすれば測定時間は半分ですむ。その1、その2の方法でも撮影間隔を短くすれば時間を短縮できるはずだ。

これはスカイメモNSを2倍速で駆動しながらCANON 200mm望遠にWebCam Iを取り付けて2.3mの所のパソコン画面上の擬似恒星を使って得たGAGP1のグラフだが計算上1Pixel=4.92秒角lなので78.7秒角のピリオディックモーションということになる。プログラム上で使えるタイマーが水晶発振子ほど正確でないのでこれも誤差を含んでいるが大体の傾向はつかめる。

 (2011/01/23 記)

その4、ステライメージで並進ズレを取得する。
その後もっと簡単で便利な方法を「かたばみ製作所さん」のBlogで発見しました。お勧めです! (2014/02/05 記) 

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